修行地の探訪。 それは各聖闘士たちの、現在に至るまでの軌跡を探すこと。 |
前号である創刊号に引き続き、第二回目の今回はいよいよ聖域の外へと出てみよう。 今回訪れるのは、聖域もあるここギリシャの南に位置するミロス島。 言うまでもなく、黄金聖闘士蠍座スコーピオンのミロの修行地だ。 では、ミロス島の中を見てみよう。 勿論、案内役は蠍座のミロ。「何もない島だぞ」とはミロの弁だが、強烈な太陽の光とどこまでも蒼い海、それに真っ白な家々の壁と家の窓枠や垣根に塗られた青い色彩はまさにエーゲ海そのものと言った風情で美しい。 ミロによると、現在のミロス島は観光と鉱山発掘で生計を立てている島だとのことである。 確かに風景は特筆すべき美しさだった。 |
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さて、ミロが修行地とするこのミロス島について、この辺で述べておこう。 ミロス島はキクラデス諸島の中でもっとも西に位置し、真下にはエーゲ海最大の島・クレタがある。 活発な火山活動により、色とりどりの奇岩に彩られたこの島は、古くから栄えた。アテネ同盟の中にキクラデス諸島中唯一参加せず独立を貫くなど、自立心旺盛な気風のようだ。 その証拠に、この写真を見て欲しい。 ミロスのタベルナは、どこでもミロスを主張したナプキンや食器を使用している。 他のキクラデス諸島とひとくくりにされては困るぞ、とミロも笑って主張していた。 先ほど「何もない島だ」などと言ってはいたものの、ミロもまたこの島を愛していることが十分に伝わってくる。 このコラムを読んでくれている皆も、ミロの背中からミロスに対する想いを感じてもらえることだろう。 その古代の栄光は島の北東にあるフィラコピ、島の中心であるプラカ・アダマスの間に位置するクリマ、トリピティに代表される。 ここから出土した「ミロのヴィーナス」(ルーブル美術館蔵/仏)「サンダルを持ったアフロディーテとパン」(アテネ考古学博物館蔵/希)は特に有名で、今なおアテネの考古学博物館で人々を魅了し続けている。 遺跡の他にも、温泉や美しいビーチが有名で、ダイビングスポットとして世界的に知られている。さらに言えば、ヌーディストビーチとしても名高い。 海岸線は奇岩で彩られ、洞窟や洞門も数多い。 ミロも、「素もぐりもダイビングも得意だぞ」と気負わずに言っていたことを思い返せば、ミロのダイビング技術はかなりのものだろう。 ポセイドンとの戦いのときにポセイドン神殿に乗り込みかねない勢いだったのも、きっと海に潜ることに対する自負から生まれたものかもしれない。 |
| では、いよいよミロの修行地を覗かせて頂こう。 ミロの修行地はミロス島の西、FAVASと呼ばれる山脈の中にある。標高は299メートル。 ミロス島は東側が居住用に開発されているが、西側はほとんど開発されていない。人が住む場所もない。 ちなみに、ミロス島の現在の中心部はアダマスである。 しかし、ミロスの中心は古来からプラカ(ミロス)と呼ばれる丘の上にある。この間は約3キロ強。 島内の交通は、公共機関としてバスかタクシー、もしくはレンタカー等の利用が便利だそうだ。 狭い島内であるため、本誌をお読みの聖闘士諸君、訓練生、雑兵諸君は勿論徒歩をお勧めする。 自分の足で走破するのが一番早いし時間も掛からない。 もっとも、旅情気分を味わいたいのであれば、バスがなかなか面白いのではないだろうか。 これはアダマス(ミロスの商業的中心地)にあるバス停の看板をご覧頂けば一目瞭然だろう。 島の西側へ行くバスがないことは、この写真でも明らかなのだから。 かろうじて夏場のみ、海岸線にペンションがオープンする程度で、あとは天文台と教会しかない場所なのだそうだ。その証拠に、西側にはアスファルトで舗装された道路もない。まさに聖闘士の修行地にうってつけな場所であり、この地が代々聖闘士と共に共生してきたのだということを、今も感じさせる。 ちなみに、ミロの修行場所からもっとも近いビーチの名前はTriadesという。外海に面したビーチだそうだが、冬場はミロの貸切だとのこと。 確かにいかにエーゲ海とはいえ、真冬の海で泳ごうと考えるのは、聖闘士くらいのものだろう。 ミロに言わせれば、冬の方が人が少ないから快適だということらしい。 但し、最近では真南にあるクレタ島からアテネへの直行便が、このミロスの西の端を掠めるように飛ぶため、修行もやりにくいのだとミロがぼやいていた。 もっとも、アテナが抜かりなく、オリンピック航空に圧力をかけ、窓から修行地が見えないように飛行機の窓を洗うことを禁止したらしい。 そのお陰でまだ、見つからないで済んでいるけどな、とミロが言ったとき、上空を飛行機が通り抜けていった。 もし諸君がオリンピック航空の機体に乗ることがあって、その窓の汚さに驚いたとしたら、それは我らがアテナの心配りの結果なのだと感じ入ることだろう。 文明の発達と共に、だんだん我らの修行地にも一般人の目が行き届くようになってしまっているのは、どこも共通した悩みのようだ。 こんな人の目に触れやすい場所を修行地としていたからこそ、ミロは一点に小宇宙を集中させるスカーレットニードルのような繊細な技を得意とするのだろうか。 少なくとも、絶対に一般人の目に触れることはないという保証がなければ、サガやアイオリアのような大技を磨くことは出来まい。 |
そろそろ誌面も尽きてきたところで、ミロスのほかの場所を紹介して終わろうと思う。 カノンには内緒にしろよ、と言ってミロが連れて行ってくれたのがこちら。 いくつか岩牢のようなものがみえるだろうか? アダマスの町外れにある場所で、勿論これらは岩牢ではなく、昔鉱物を採掘した後の名残としての坑道だろう。 だが、ここを通るたびにスニオン岬の岩牢とカノンを連想してしまうのだとミロが笑っていた。 確かに、オレ達には鉄格子を見るとカノンを連想するクセが、最近身につきつつあるようだ。 カノンにばれたら、さすがにカノンの機嫌を損ねること、間違いない。 |
こちらはアダマス中心の広場。 ここにバス乗り場やタクシーステーションがある。 ミロスの中心としてこの島の発展を支えてきたのはプラカだが、現在の商業的中心地は既にプラカからこのアダマスに移って久しいことを感じさせる。 |
また、この広場の中には、日本で有名なピカチュウがいる。 以前氷河がこれを見たとき、「日本のピカチュウは白目などない」と冷静に指摘したらしい。 ミロは、コレがピカチュウなのだと信じて疑っていなかっただけに、これは本場・日本から来た人間が見れば偽物なのだと知ってなかなかショックを受けたのだそうだ。 ちなみに、オレもミロからその話を聞かなければ、何の疑いもなくピカチュウだと認識して終わっただろう。 |
こちらはアダマスの郊外にある難破船。……のように見えるが、夏場にオープンする酒場だとか? 打ち捨てられ、背景に溶け込んでしまっているため、こんなところに難破船があっても、あまり景観を損ねていないのが面白い。 |
勿論、タベルナは夜遅くまで賑わう。 ミロスに限らず、島嶼部ではアテネよりも食べ物が美味いという。 その話は、このオレ、牡牛座のアルデバランが身を持って確かめた。確かにアテネよりもミロスのタベルナの方が安くて美味い。 |
こちらは、パスカのときに食べるエッグパイ。ミロの顔なじみであるペンションのおかみさんが特別に朝食に出してくれたもの。 中心にあるショッキングピンクの物体は、復活祭ではお馴染みの赤く染めた卵。 何で染めているものやら、殻をむいた中まで、ほんのりとショッキングピンクに染まっているのには驚いたが、卵自体は半熟で美味かった。 そしてギリシャのホテルやペンションに行くと大抵お目にかかれるこのヨーグルト。 少し硬めでさっぱりしていてこれもまた美味。 勿論、オレはこの皿のほかにも外で大量に食事をしているから安心して頂きたい。 |
こちらはスブラギ。量といい味といい値段といい、食べる価値は十分にある一品。 アダマスのタベルナにて。スブラギが埋まるほど、たくさんのポテトをサービスしてくれた。 近くでは地元客がバックギャモンに興じている。 おおらかな土地柄のようだ。 |
こちらはカラマラキア(イカの揚げ物)。やはり島ならではの新鮮な魚介類は、ミロスに限らず島に行ったら是非食してみたい。アダマスにて。 |
ミロスには勿論、ギリシャ料理だけではなく普通の料理も揃っている。 左はパスタの上にチーズをかけ、オーブンで焼いたもの。右は万国共通ハンバーグ。どちらも非常に美味。これらもアダマスにて。 |
そしてもはや知らぬ者はいないほど有名な話だが、ミロといえば、ギリシャ語で「りんご」。この林檎をふんだんに使った「りんごのパイ(ミロピタ)」も、ミロ縁の食べ物として紹介して、今回のこのコーナーを締めよう。 誌面の都合で割愛するが、このミロスに残る神話には、「ミロ」が出てくる。興味がある方は、ミロに是非、ミロスの神話について話を聞いてみるといいだろう。 次回は再び聖域に戻り、アイオロスの人馬宮アスレチックを訪問する。良ければまた、お付き合い願いたい。 |
Special Thanks (ILLUSTRATION) Locomoco(Locomoco-supersize)
Written by Mizu Nanase(SHADOW)